肥えたシクロクロッサーが王滝100kmに出場した場合

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走り終えた男の背中(写真:ボウズの人)

シクロクロスはオフシーズン。カテゴリ2残留の安心からすっかり肥えたが「セルフディスカバリーアドベンチャー・イン・王滝 クロスマウンテンバイク100km(以下「王滝」)」に出場してきた。

「尖った石だらけの荒れたコースだからとにかくパンクが多い」、「補給はこまめにとったほうがいい」と聞く。これに対し、王滝初出場の自分が準備したことは、バルブコアが外れるシュワルベのチューブにノーチューブのシーラントを入れること、予備のチューブと補給食を買うくらい。

荒川の舗装路ですり減った後輪のタイヤもそのままで、高低図くらい用意したほうがいいかなぁなんて思いつつも、結局持たず、宿もとらず、小さな愛車で初めての車中泊を決めていた。

イベントの名前そのままに「どれだけ自分を発見できるか」を今回の課題としているが「適度なチャレンジ精神、適度な準備、適度なゆるさ」が走る前からみなぎっている。6時きっかりのスタートの合図で、先導車の後に続き、しばらくはパレードラン。

先頭がみえる位置で走っていると、先頭付近にはレース開始前の勝ち負けを意識した緊張感が。先導車がはけ、ダートに入りレース開始。先頭のペースは速い。「ひたすらたんたんと心拍数で80%ちょいくらいで走ろう」と決めていたのに、まわりのペースが速すぎる。

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スタート直後は舗装路をパレードランで(写真:王滝村公式ブログ)

「みんなゼーハーゼーハーしながら走ってるけど、これじゃ100kmもたなくないか?」他人は他人、自分は自分。たんたんと最大心拍数の80%ちょいをキープする完走第一の安全走行を心がける。

それでもひとつめの上り、距離10kmと進まないうちに腰が崩壊してしまった。 普段は荒川の平地しか走ってないから、心拍数の指標でペースがゆったりでも腰にくるらしい。

ひと山越えてからの下りは、聞いていたとおり角のある石だらけ。落車して石が身体に突き刺さるのは想像もしたくないし、それ以前にパンクも嫌だしで、守りに徹したキレのない走り。崩壊した腰では身体を支えることもままならず、体重移動で軽快に下ることもできない。

そんななか「あいや〜」と声がして抜いていったのは、アダチモフ。極度の睡眠不足でもシクロクロスのカテゴリ1を上位で終える男だ。昨日の夜も「寝ない」宣言をし、寝ようと準備していた自分に淹れたてのエスプレッソをすすめてきた男アダチモフ。おそれを知らない彼の下りは滑降である。抜かれて数秒でみえなくなった。「あのひと優勝するんじゃねーの⁉︎」と思えるくらいの下りっぷり。

アダチモフは例外として、上りが得意な人、下りが不得意な人いろんなタイプがいて、抜いて抜かれて抜かれて抜いてとそれなりにレースらしきものを感じる。

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受付へ急ぐアダチモフ

長い下りの途中でフレームからガタガタと異音がするので止まって確認するとボトルケージのネジがゆるんでいた。工具を取り出し、ネジをしめるだけなのに痛む腰で、普段まわるものもまわらない。これが王滝の洗礼か。ブログネタに写真を撮る気にもならない状態の腰。やっとのことでネジをしめて、再スタート。

パンクを修理しているアダチモフをパスし、少し進み下りきったところで第1チェックポイント。給水を受けるにも腰が終わっている。ヨロヨロとボトルに水を注いでいるうちにアダチモフが「あいや〜」と通過していった。

こまめに摂らなくてはいけない補給食のジェルが口のなかでネッチョリと不味い。ガレた路面の下りで手のひらと腕、頭を支える首の筋肉が痛めつけられる。下りがまったく面白くなく泣きっ面。

湖のわきを通る平地は、ホームコースの荒川サイクリングロードのようで気持ちがいい。ペダルをまわすことで腰に血液が循環し、痛みがやわらいでいくのを感じる。気持ちのいい平地はそこだけで、その後はすべて上って下っての繰り返し。

残り30kmくらいでコースはより過酷に。そろそろ終わりかと思わせて終わらない残り10kmのアップダウン。最後の下りももちろん泣きっ面。ゴールするまで解放しないドSなコース設定。

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「自撮りは控えめに」が信条

ゴールタイムは6時間55分。走り終えてグッタリしたところで再び三度、アダチモフ。聞くと、彼はチェックポイントの休憩を1度もとらず、補給は羊羹とベビースターで走りきったらしい。

秋の王滝120km出場権を得られる7時間切りを達成したが、反省点はいくつかある。

  • 補給

補給食は美味しく食べたいもので、食べやすいものをしっかりと食べる。食べたいものなら羊羹でもベビースターでもいい。不味いものを食べたくないからって躊躇しているうちに軽いハンガーノックがやってくる。今回は、補給食をたっぷりと余らせてしまった。

  • 運動強度

平均心拍数80%ジャストと、いまいち追い込んでいないことも反省点のひとつ。平均では83%くらいまであげても良さそうだ。

  • 装備と機材

下りに適切なグリップとグローブを用意し手のひらをいたわる。高低図は用意する。ネジはしっかりしめる。

これらの反省点は、次回の出場に生かすためにあるような気がするけど、全身が痛い今は、とりあえず次回を考えたくない。

10分200円の有料シャワーをあび、泥を落としながら「パリ〜ルーベ」でゴールしたもののみが使うことができるシャワー(無料)を妄想した。初の王滝完走、過酷なコースでやりきった感動がそこにはあったのかもしれない。

順位は163位(600人くらい出場)、タイム6:55:51。発見できた自分「予定外につらいときにひとりごとを言う」。「えー、まだ終わらないのかよ〜」と。