シクロクロスで行く第2回APAレポート
Asaka Prestige Arakawa(APA)、まさかまさかの第2回目が開催された。2週連続開催で出し惜しみなしだ。
前回とほぼ同じコースではあるが、前回のAPAハイライトとなった桜のゲートを大胆にもカット。かつてオルガナイザー金子氏とふたりだけで走ったAPAの原点となるルートを行く。
かつての私はシクロクロスバイクで砂利道を走るだけでひとり満足していた。
そしてある日、この楽しさを金子氏にも知ってもらいたくて、こっちこっちと手招いて、舗装路から横道に逸れて自信満々、意気揚々とお気に入りの砂利道を走りだした私を「多摩川のほうがおもしろい」と一刀両断したのだ。期待していた共感を得られず、深く刻まれた心の傷。参加者のみんなは、はたしてこのルートが楽しいのだろうかと心配になる。
今回のAPA参加者は1回目と同じ9名。そのうちリピーター5名。2回目にしてリピート率50%超とは、招集するオルガナイザー金子氏が「APA人気イベントだわ〜」と、ひそかに調子こきまくる要素でしかない。ブログなんか、2回目開催となると言いたいことないからな。
それでいて初めての参加者に「たいしておもしろくないコースですから」と金子氏がスタート前に話すのは何の予防線か。
でもねー、結果的に楽しいのよね。パンク修理ひとつで盛りあがったり、晴れた空の下で食べるレトルトカレーのそれなりのおいしさも。それなりのカレーを食べながらする餃子の皮づくりに凝っているという話も、レトルトカレーを食べた後からなぜかはじまってゴールするまで10回くらい聞かされたトイレを長時間我慢できる体質の話も、自分がどんな風に笑っていたかを忘れてしまうくらいの自然な笑いがそこにある。
脚力もそれなりに揃っているから、繋ぎの舗装路も高強度で、ひとたび砂利道に入れば、平静を装いつつも意地の張り合い。砂利道前のけん制する雰囲気も、ちょっとつらいときにヒジ先を後ろから前にクイッと向ける「先頭交替要求のしぐさ」も、その要求を無視するのもまた笑いのエッセンスになってしまう。
たった100kmされど100km。今回のAPAもひとつの困難な旅をともにした一体感がゴール地点に生まれたようだ。
解散後、しばし金子氏とふたりきりに。そろそろ荒川周辺の未知のコースを開拓したいと思っていた私に「イヤになるまで同じコースでやりたい」とオルガナイザー金子氏。変態を感じた。そんな金子氏に「ほら、荒川も楽しいでしょ」と聞くのはもうやめておこう。それは野暮というものだ。
みんなの撮った写真はlnstagramで#APArakawaをみてね。それなりのカレーをそれなりの表情で食べる私の写真もあるよ。
APA、まさかの2回目開催が決定
2015年のほぼ開幕戦であった「茨城シクロクロス」でTEAM TAMAGAWAの金子さんはトップカテゴリに昇格した。
かつてのライバルは、あさかの走りにダメ出しをするようになる。
金子氏とサイクリングをするなら、慣れ親しんだシクロクロスバイクがよい。
脚力の差がそれほどないことを確認する。足りない部分をみつけ、来シーズンへの成長につなげる。そして、すきあらば、その天狗の鼻をへしおってやるのだ。
サイクリングロードの舗装路から少しそれて、ひと気のない砂利道を進む。お互いの心拍数を確認しながら、荒れた道を並走する。こちら77パーセントで余裕あり、あちら85パーセント。ここに勝機しかないだろう。
のぼり坂の入り口で、さらに負荷をあげていく金子氏。こちら90パーセント。くー、きつい、そこから金子氏のスパートで、一気に突き放される。
金子氏の解明しがたい謎の強さ。そして発せられるダメ出しを甘んじて受け入れるしかない格下の私である。
さらに何度もアタックしては「あさかクッソ弱い!」と罵倒する情け容赦ない金子氏。そこにサイクリングの快感を得ているふしがある。
このサイクリングが楽しすぎてみんなにもコースを知って欲しくなったのだろうか。罵倒する相手を増やし、もっと快感を得たいと思ったのだろうか。
金子氏がオルガナイザーとなり、急遽Asaka Prestige Arakawa(APA)の名のサイクリングイベントをSNSで告知。
室内トレーニングでの苦悶の表情をみせたくて、個人宛に送りつけたおふざけコラージュ写真を勝手転用する金子氏。「道中、ゴリラの出現に注意」の言葉を添えて、初回APAへの招待が始まった。
その告知になんと9人のシクロクロッサーが集まった。その日の様子は当ブログにて既報の通りだが、ここだけの話、オルガナイザー金子氏はほとんど前を牽引しなかったにもかかわらず、ゴール直前に両脚をつるというオチをつけている。
それから「金子クッソ弱い!」「あさかAPAは強いけど、シクロクロスくっそ弱い!」と罵倒し合う毎日である。そしてこのたび、めでたくAPA第2回目開催が決定した。
オルガナイザー金子氏、まさかの2週連続開催告知の出し惜しみなしである。
またみんなで走れば、両脚をつることになるというのに、どうやら苦手な部分を克服したいと考えているようだ。もっと強くなって全方位から「あさかクッソ弱い!」と言いたいのだろう。
フリードリヒ・ニーチェが言う。「脱皮しない蛇は滅びる」。金子氏が脱皮をはかろうとも、こっちも脱皮してやるからな。道中、脱皮したゴリラに注意せよ。
1枚目の写真:堀さん
シクロクロスバイクが大好きな理由
レースのシクロクロスが好きかどうかはさておき、シクロクロスバイクが大好きだ。
舗装路ではロードバイクよりはスピードに劣る。でもそれも言うほど遅いわけでもなく爽快感としては十分。
ひとたび砂利道に入れば、砂利を掴んでは放つを繰り返すタイヤの音が聞こえる。あれがいいんだ。空気圧の高いタイヤが砂を弾く音とは少し違うあれがいい。あの音を聞きながら集中して走れば、強い向かい風も忘れてしまう。
ロードバイクと同じ細いスリックタイヤもつくけれど、やっぱりね、シクロクロスバイクにはシクロクロス用のタイヤがいいんだよね。太いタイヤをつけるための設計の自転車に細いタイヤは似合わない。彼の家にお泊まりした小柄な彼女が、彼の服を借りてブカブカに。あれだわ。それ理想の展開だわ。例えを間違えたわ。
さぁ! 前を行く自転車からの跳ね上がる泥水も、しかと顔に受けましょう。どれだけ泥を愛せるか。泥にまみれたシクロクロッサーたちは美しいのだから。たぶん、そんな風に思う同志たち9人が荒川に集まった。
砂利道、泥道、けもの道(?)を繋ぎ、極力舗装路を避けながら、東京足立区から埼玉桶川のホンダエアポートまで行って帰ってくる。
ペダリングを止めればすぐにとまってしまう凸凹の路面が休むことを許さない。普段、シクロクロスのレース会場で会うみんなだから、自然とだらしない走りも許さない。距離にしてたったの100km。されど100kmのハードな道のり。
丁度、この翌日の開催となるパリ・ルーベのコースのようにもみえなくない風景に心ときめく。意図せず水たまりに突っこみ、泥にまみれれば、歓喜の声があがる。土手を覆い尽くした菜の花の黄色に、半袖ジャージの季節を想う。走り飽きたはずの荒川もシクロクロスバイクがあればまだまだ新鮮だ。
なかでも、昼のうどんを求めて急遽コースを延長して走った埼玉県吉見の桜のゲートが本日のハイライト。桜吹雪とおじさんたちの対比で、桜はもっと美しくなれるんだ。
うどんに満たされた復路、砂利道を欲して砂利へ砂利へとさまようとその道はループして、さっきみたばかりの3度目の桜のゲートへ戻ってしまった。シクロクロスバイクがもたらす感動の押し売り。
きっとみんな思ってる。そんな自転車が好きだ。そんなシクロクロスバイクが大好きだってね。
みんなが撮った写真はInstagramで#APArakawaをみてね。
シクロクロスのためのランニングを開始
すっかりオフシーズンになり、ランニングを開始しました。自転車のためのランニング。もちろんシクロクロスのためのランニングをです。
自転車しか乗らないので、自転車用の筋肉しかなく1km5分のペースで5kmも走れば、歩行も困難なほどの筋肉痛になってしまう、今はそんなレベル。
私が愛してやまないシクロクロスという競技は、自転車競技であるにもかかわらず、レース中に自転車から降りて自転車を担いだり押したり、エイサホイサとランニングする姿が印象的で、酔狂なスポーツととられがちだし、まぁ実際そうかもしれない。
でも、少しだけランニングの世界も覗いてみると、ランニングにも酔狂な世界はひろがっている。マウンテンバイクで長野の山を100kmを走るセルフディスカバリーイン王滝。自転車でもなかなかにキツイし、ゴール前に泣き顔になれる。
あれのトレイルランニングがあるらしい。距離は100kmどころか、100マイルもあり、24時間くらいかけて完走するらしい。富士山の外周をランで1周するウルトラトレイルマウントフジってのもある。
競技の種別に問わず、想像を超えた世界があるものだ。
完走を目指すとも思えないようなおかしな世界ではあるけど、数々の達成しえないと思っていた困難なレースやイベントにそれぞれ目標を掲げ、努力の後に達成し、その感動を味わい貪っているうちにそこにたどり着いているのだろう。
その世界は間違いなく「感動は自分の中にある!」と知るものたちの巣窟である。素晴らしいとしか言いようがない。
もし、あの山の中の100マイルを完走したら、いったいどうなるんだろう。
長い長いシクロクロスシーズンからオフシーズンに入り、ただ楽しくランをしたり、ただ楽しく自転車に乗ってストレスフリーになっていて、これはこれでいいんだけど、そろそろ気持ちはオンにする。まだまだ感動至上主義でありたいのね、自分なりに。
シクロクロスのフレーム選択、カーボンかクロモリか
ロードでは少し機材に詳しく、はじめてシクロクロスの会場にきたあなたは参加者の自転車をみわたして何と思っただろうか。
自分の知らないメーカーの自転車が多い。細身の自転車も多い。白いタイヤは汚れ目立ちそうだな。リアディレーラだけ廉価なSORA⁉︎
ロードで知ったブランドのフレームやパーツをみつけることももちろんあるが総じて、参加者が自分だけのこだわりの自転車を用意している印象を受けないだろうか。
トップカテゴリでも細身のクロモリ(鉄)の自転車にまたがる出場者はポツポツいて、そのこだわりと実力に、初心者ももしかしてクロモリもありなんだろうかと選択肢がひろがりまくるという、夢というか、機材選択の迷いが生じることもあるだろう。
初心者はクロモリがいいか、カーボンがいいか。カーボンは落車したら壊れるんじゃないかといろいろと心配になるらしい。
落車したとしても乗り手の身体が先に落ちるし、ハンドルバーがある都合、フレームが直接地面にたたきつけられることは、ほとんどない。
カーボンが壊れるときは、クロモリも同じく凹む、もしくは壊れるときだ。
いやいや、ちょっと重くてもクロモリはしなやかで路面追従性が高いらしいし。カーボンはどうなのか。もんもんもんもんもんもん。
走力が十分ではない初心者が迷うべきは素材選択ではない。必要なのは軽さだ。
降車して自転車を担いで階段をのぼったり障害物をとびこえたりする場面は必ずやってくる。重い自転車はとにかくここで消耗する。ひょいひょいと軽快に駆け上がるライバルに食らいついたとしても、消耗の差が違ってくる。
消耗すれば乗車後にも影響してしまう。だから、とにかく軽く。とにかく。
シクロクロスをはじめたばかりのころの私も、総重量10kgもあるクロモリの自転車に乗ってレースに挑んだことがある(冒頭の写真)。そのときは障害物をクリアするたびに泣きがはいった。
クロモリのオーダーフレームに財を注ぎ、カーボンフォークにカーボンホイールをはかせ、超軽量な自転車を目指すのもいいだろう。それはきっと超こだわりの世界。
そこまでのこだわりはなく、ひとまずレースに出場し成績を伸ばしたいと願い、クロモリかカーボンかでただ迷っているとしたら手っ取り早いのはカーボンのフレームを使うことだ。
最近は軽くてしなやかなアルミフレームもでてきたらしいし、いろいろ例外はあるけどね。
写真・しかまさん(Team CUORE)
サヨナラできない肩の痛み
落車で何度か頭を打ちつけている後遺症で、肩甲骨のあたりにクリーチャーを飼いならしている。私の身体に触れた整体師の人数は、両手で数えられる程度だが、全員が「ここ何かいますね」と指摘してきた。
また昨日、あの痛みがやってきた。眼が覚めると痛みで起き上がれなくなっていた。上半身の動きに肩まわりが追従してこない例のやつだ。
カルテによるとこの激痛で泣いていたのは、去年の5月、天気のよい日曜日。日曜日でも診てもらえる先生を必死になって探した。
広告費をたっぷりとかけ「カードの支払い可能」をでかでかとサイトにうたい、いかにも高額請求しそうな近場の整体を邪魔くさいと思いながら。
約1年ぶりの再会に「春になると痛むんでしょうかね」と葛飾区の整体師。桜の開花がはじまっている。
施術は全体のマッサージ、鍼と鍼への電流、置き鍼、湿布。黙々ととても丁寧に試行錯誤してくれる。
「明日も来れる? 明後日は?」と次回の通院を急かすことはせず、今日のベストを尽くしてくれる。
夜は、眠るとまた悪化するだろうと恐怖して夢に落ちたが、今朝もひどい痛みはあっても確実に良化している。
顔に吹き出物がふたつ、肩が爆発とシクロクロスのオフシーズンに入った瞬間にゆるんでしまった。
今朝の体重59.5kg、体脂肪率11.6%、数ヶ月ぶりの50kg台がやってきた。ほぼベスト体重もまったく意味がない。
遠征車に愛をこめて
年間10戦以上の参戦となるシクロクロス遠征の相棒はFIAT500。
排気量875ccのツインエア(2気筒)のターボエンジンのマニュアルトランスミッション車で、アクセルワークへのレスポンスもいい。
排気量を小さくして燃費向上とエンジンそのものの軽量化をはかり、そこにターボをつけることにより走行性能もあげていく。ヨーロッパでは主流になりつつあるこのダウンサイジングの思想を取り入れたエンジンがツインエア。2011年のインターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー総合最優秀賞も受賞しているFIAT社の意欲作だ。
自転車を載せハンドルをにぎるたび、運転のよろこびがこみあげる。
遠征先のワインディングを軽快に走るのも、はやめのシフトチェンジでスピードはゆっくりと、市街地でドコドコと鳴るエンジン音に耳を傾け走るのもまた楽しい。
(ごんださん撮影)
写真のように屋根にサイクルキャリアをつければ、すなわちイタリアン・スタイルなんだとか。イタリア人が言うんだからたぶんそうなんだろう。イタリアの車に、イタリアの自転車グエルチョッティ、自転車にはイタリアのコンポーネントが備えつく。気づけば、人間だけが純ジャパニーズだったわけ。
この小さな車にサイクルキャリアはおさまりが悪くやや不恰好だけど、ひとたび不恰好をあきらめてしまえば自転車4台に4人乗車も不可能ではない。
小さな車にすし詰めになっての4人遠征は必然的にワイワイガヤガヤと意外なほどに盛り上がるものだ。
シクロクロスのレース会場に着くと、ついつい愛車の写真を撮ってしまう。記念撮影は高速道路で殺めてしまったフロントガラスの虫の亡骸を拭き取ってからね。どんなスピードで走ってきたかは、愛車と私だけの秘密である。
シクロクロス最終戦を終えて、シーズン中は載せっぱなしにしているウォーミングアップ用のローラーをおろすと荷台は広々と、泥のかけらだけが車内に残って、おセンチに。
また来シーズン。ありがとね。